うまの横顔

都会で刺激的な生活を送る僕と、田舎で何の変哲もない生活を送る猫。

漱石の「こころ」のすゝめ

夏目漱石の「こころ」を読んだ。久しぶりに胸を打たれた。


 皆が知っている夏目漱石の、また皆が知っている代表作「こころ」。どんな物語か、暗い話か、明るい話か、どういった結末か、恐らくは結構なひとが知っているかもしれない。たとえ内容を知らなくても、少なからず「こころ」というタイトルくらいは聞いたことがあるだろう。中学校の国語の教科書に載っているから、そこでしったという人が大半なのではないだろうか。誰もが一度は触れたことがある作品であるはずだ。「知らきゃ恥だよ」と言ってもまったく大げさにはならぬほど、国民的な本だと言える。

 しかし、この本を皆が皆読んだことがあるというわけではない。ほとんどの人が触れたことがあるとは言っても、それは中学校の国語の教科書に載っていたからであり、しかも教科書に載っている「こころ」は、1章と2章が省かれて、最終章である3章「先生と遺書」だけであった。だから、「昔学校で習った」という人のほとんどは、はじめからさいごまで全て読んだというわけではない。当時読んだときには、載っている内容がすべてであると思っていたかもしれないが、先述したとおり、載っていたのは計3章のうちの最後の1章だけであった。3章の「先生と遺書」だけでも物語としては完結しているから、勘違いされやすいと言えばそうかもしれないが、とにかく、ひとはすべてを読んで初めて、「読んだ!」と言うものだ。だから学校で読んで学んで、のちに自主的に本を買ってすべてを読んだという意識の高いひとや、読書好きでのちに読んだという僕みたいなひと以外は、本当の「こころ」を知らないわけだ。

 絶対に読んだ方がいい、と僕は断言する。国民的な本だからという理由もあるが、それよりももっと大切な「なにか」が得られるはずだから。わからないけれど、本当に深いんですわ、この本。「K」とか「私はその人を先生と呼んでいた」とか、懐かしいフレーズや単語が出てくるから、其れに合わせてきっと思い出す、若かりし頃のあなたの「こころ」を。学生時代を懐かしみつつ、年を重ねて涙もろくなったあなたに、ぜひ、「こころ」を読んでもらいたい。(失敬)

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