うまの横顔

都会で刺激的な生活を送る僕と、田舎で何の変哲もない生活を送る猫。

「百田尚樹が好き」は禁句です

「好きな本?最近読んだ本の中で言うなら、百田尚樹の「永遠のゼロ」ですかね」

この発言の直後、目の前で楽しそうに笑っていた彼女の顔が一瞬で強張り、僕らの間にスウーと冷たい風が流れた。その時、僕は「あ、やばい」と思った。


彼女は新聞記者である。しかも、その新聞社というのも、朝日新聞社である。百田尚樹を知っている人であれば、この時点で「ああ」と苦笑しながら、おそらく「なるほど」と理解する。今となっては有名でもあるが、百田尚樹は「朝日嫌い」で有名な作家であるのだ。(彼自身が著した本「永遠のゼロ」や「殉愛」の小説の中でも朝日新聞を批判しており、実際、彼は、公の場でも「朝日嫌い」を明言している)。つまり、「朝日嫌い」である百田を当の朝日新聞社は、「大の百田嫌い」なのである。だから、「百田の本が面白かった」発言は、朝日関係者(彼女)の前においては、禁句ともいえる。


僕は訂正および謝罪した。「あ、いや、つまり、その一冊しか最近よんで無いっていうか、その・・」

しどろもどろになりながら、見え透いた嘘を必死に唱える僕を、彼女はどんな感情をもって見ていたのか。

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