少し気味の悪い奴だ。
200人もを収容するこのハコに、マイクを通したいかにもやる気のないような低い声がびーびーと響いている。
黒板のある逆側が前方であるように、後ろからみっちりと詰められていて、その分、前の席がスカスカになっている。
教室を見渡す。
頭のやや白い叔父さんが、一番前の席に座っている。横に目を移すと、ぼおぼおと息の入ったマイク声を一言一句聞き逃すまいと聞き入るように目をつぶる坊主の学生だ。その隣には、黒板に被さるように上から垂れ下がるスクリーンを見つめ、必死に手元を動かしている短髪の学生がいる。
そこから少し後ろに目を移していくと、寝ている学生が多い。
ぐったりと机に頭を伏せる者、シャープペンを右手に聞く姿勢のまま夢の世界で起きている者、腕を組んで「娘の結婚に断固として反対する!」といった顔で寝ている者もいる。
さらに後方に目をやると、今度は起きている者が多い。
必死に携帯の画面を叩いている者、赤いイヤホンを右耳にミュージックの世界に耽る者、大きなパソコンを机に置きパタパタと叩く音を響かせている者。
教室全体を見渡してみると、面白い。
どの授業も、前方・真ん中・後方と、うまい具合に3グループに分かれているからだ。
僕のような気味の悪い人間はたいてい、前方のグループに属している。
前から4列目にいるあいつは、必死に手を動かしている。手元にはスマホだ。数秒間に1度顔を上げて、教室をキョロキョロと見渡して、ときどき止まって人を観察している。
少し気の悪い奴だ-------------------
誰が僕を観察して、そう書いているかもしれない・・・。